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性周期を軸にした「女性の生涯学」の提案と社会参加への応用(科研費・学術変革領域研究A「生涯学の創出」公募班採択課題)

性周期を軸にした「女性の生涯学」の提案と社会参加への応用(代表研究者:江川美保)は 科研費・学術変革領域研究(A)「生涯学(Lifelong science)の創出ー超高齢社会における発達・加齢観の刷新」における2021年度~2022年度公募班・境界領域研究課題に採択されています。

「女性の生涯学」コンセプト

江川美保作図

研究の目的と内容

子どもを産み育てる生殖機能をもつ女性では全身を巡る女性ホルモンが生涯にわたってダイナミックに変動し、それは女性のこころとからだの両面の健康に大きな影響を与えます。 そのような女性たちがウェルネスを保ちつつ心地よく社会参加し続けられるような世の中を作るためには、女性特有の生殖生理の理解と生物学的根拠に基づいた「生き方の指針」が求められています。

産婦人科医師としてあらゆるライフステージの女性に寄り添ってきた25年以上の臨床経験を通して「歳を重ねれば重ねるほどますます自分らしく輝く」ような女性の在り方を応援したいと思い,そのために何を目指すべきかを考え続けてまいりました。

生涯にわたり成長と変容をつづける女性の生涯発達プロセスのイメージと各ライフステージにおける課題を図に示します。

月経や妊娠・出産などを体験し心身がたゆみなく変化しながら様々な役割を担うことになる女性が生涯をとおしてその人らしい成熟を遂げるために目指すべき在り方は「自律」なのではないかと考えたのです。つまり「自分の健康と幸せの主導権を自分が握っている」状態です. 自分が何をどう感じ考え行動しているかに気づき、「自分がどうありたいか・どうなりたいか」を基軸にして、自分が何を必要としているかを知り、必要な助けや手がかりを求めて対処する……。

「変化」に対処する力をはぐくみ成長し続けることを促すための具体的なメソッドとして「自律」的な健康管理(=ヘルスケア)を提案したいと思います。私たちはまず、社会の再生産と生命の再生産を担う性成熟期(reproductive age)において女性のメンタルヘルスに大きな影響を与える月経前症候群(PMS)に着目しました。

PMSを医学的に適切に診断・評価するために不可欠である症状記録法として私たちが開発したスマホアプリを用いた「セルフモニタリング」の臨床的効果を検証します。同時に、このアプリを基にしたPMSの効率的な診断方法やフォローアップ方法も実用化を目指して検討してまいります。 月経を軸にした質の高いセルフモニタリングツールを確立することは, それを将来的に新しいケアや治療の効果を判定する手段として活用するためにも、新しいデジタルヘルス開発における必要不可欠な機能単位として組み入れるためにも、着実に踏んでおくべき重要なステップだと考えています。また私たちは、症状が多彩でとらえがたいPMSの客観的指標を探索するためにfMRIを用いた脳科学的解析や自律神経測定も行い、PMSの神経学的基盤の解明にも挑戦します。このように「自覚するコンディションの記録」と「生体指標の取得」という2つのアプローチによる「PMSの可視化」を試みることを通して女性の自律的健康管理法を提案し、 変化に富む女性の全ライフステージを貫く「自律的生き方」への展望を開きたいと考えています。

私たちの次の研究に参加・協力してくださっているみなさまに心から御礼申し上げます。

1)月経周期に関連した脳機能及び自律神経活動における神経基盤の解明・・・参加受付を終了しました

2)PMSアプリ研究(ランダム化比較試験)・・・参加受付を終了しました

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